自家歯牙移植
昨日、Mさんが定期検診に来院されました。
このレントゲンは以前来院際、右下7番目の大臼歯の歯根が破折していたため、どうしようもなく抜歯した時のものです。
この時、後ろに埋伏していた親知らずを利用して移植を行いました。移植直後のレントゲンです。
移植後1カ月後のレントゲン所見。移植した親知らずの周囲に歯槽骨の再生がみられます。移植直後はグラグラだった歯の動揺がこの頃はなくなってきました。
この後、歯の中の神経の処置を行ってから上の歯との適切な噛み合わせを作るため被せものを入れることになります。
昨日、移植後4年11カ月後の写真。
6ヶ月毎の定期検診も欠かしたことがない真面目な方で、ご自身の手入れも丁寧に行っておられるのですこぶる状態良好です。特に問題もなくしっかり噛めています。
ご自身の別のところに生えている歯を移植して利用するのを自家歯牙移植といいます。
色々な条件が合わないとできない治療法なので、誰でもできるわけではありません。
しかし成功すれば、自分の体のものを利用して使うので害がありませんので有効な治療法となります。
インプラントと天然の歯の違いは、インプラント(人工歯根)は顎の骨と一体化しているのに対し、天然の歯牙の歯根の表面には歯根膜という感覚受容器があるため、噛んだ時の細かい感触が脳に伝わところにあります。インプラントを否定していませんし、適切に行えればこれはこれで良い治療オプションですが、やはり天然の歯には勝てません。
昔、東幹久が歯は命と言ってましたが本当にそうです。何事でもですが、当たり前にあるとなんとも思いませんが、失って初めてありがたみに気付きます。
大事にしましょう。